
外資の総合ITコンサルに転職してもうすぐ4年になる。
32歳で転職し、当時のことを振り返ると、下記のように考えていた。
給料アップのためにコンサルに転職したいけど、技術力が足りないかもしれない。
優秀な人が多いイメージがあり、やっていけるか不安
当時の日系SIにいるエンジニアと話すと、この不安を持っている人はめちゃくちゃ多かった。プログラミングや英語など、特別な秀でたスキルがないと外資コンサルには入れないんじゃないかと。
俺も当時は全く同じ不安を抱いていた。
先に結論を言うと、多くの人が「必要」と思っているような技術力、たとえば下記のようなスキルなどは、実務ではそこまで求められないケースが多い。
- コードをバリバリ書いて実装できる力
- 深いアーキテクチャ設計を行える力
- チームで大規模なシステム開発を行える力
だけど、テクノロジースキルのある人の方が、コンサルにおいては圧倒的に人材価値が高いということも間違いない。
じゃあどんなスキルが求められるか、なぜテックスキルがある方が有利なのか、この辺りを現役マネージャーの視点から整理することで、実際に必要なスキルを正確に把握し、少しでも外資コンサルへの転職を目指す人たちの参考になる情報を発信していきたい。
目次
そもそも「技術力」とは

ITエンジニアにおける「技術力」といっても、その幅は広い。
フロントエンジニア、バックエンドエンジニア、インフラエンジニアなど、エンジニアの種類は多岐にわたるし、扱う言語やツールによってスキルセットは全然違ったりする。
あくまで俺の中の基準では、エンジニアと名乗り、技術力がある人の定義をするとしたら、「一つ以上のプログラミング言語で特定のシステム(例:ECサイトなど)を一通り構築・実装できる」、かつ「チーム開発の経験がある」ことが最低条件と思っている。
例えば下記のようなスキル・経験は「技術力」に該当する。
- プログラミング言語を一つ以上は使いこなせる
- Gitを使いこなせる
- システムアーキテクチャ(認証やDB、ホスティングやAPI開発など)を理解し、構築できる
- チーム開発で一つ以上のコンポーネントを作成した経験がある
- システムの下流工程(設計、実装、テスト)に1年以上携わった経験がある
さらに長年エンジニアを極めている人は、チームリードとして、システム開発の設計・開発・チームマネジメントを率先できるエキスパート・スペシャリストのような人たちもいる。
かなり下流寄りの視点だけど、ITエンジニアの技術力とは、この下流工程のスキルが全ての基礎となる。
コンサルであれば、その道のプロにも関わらず、実装経験がゼロであればそもそも何をコンサルするのよ、という話である。
どんなに優秀なマネジメント層やプロジェクトを回す管理者(PMOなど)の人たちが吠えたところで、そのシステムを開発する「エンジニア」がいなければ何も生み出せないことは紛れもない事実である。
外資ITコンサルが本当に求めているスキル

ITコンサルで求められるスキルは、結局は「ロール」と「職位」次第ではあるんだけど、どのポジションにおいても必ず求められるスキルがある。
具体的には下記3つだ。
クライアントフェイシング

クライアントと対話し、要件の実現性を説明したり、お客さん要望のQAを捌いたり、具体的なスケジュールの提示などを行うことが求められる。
俺はこれが一番苦手なんだけど、コンサルでやっていくにはクライアントとの対話は避けて通れない。これは技術力というよりは、コミュ力やファシリテイト力などのヒューマンスキルに近い側面かもしれない。
自ら行動できる積極性

コンサルで一番重要だと思っているのはこれ。
言われたことをやるだけでなく、「自分がやります」と手を挙げられるかどうかが超重要になる。
担当タスクをこなすのは当たり前で、その上でチームの課題を見つけて自分から動けるかどうかが問われる。
誰かが困っていれば声をかける、課題があればそれを報告し、自ら解決策を提示する——そういう動き方が、日系SIとの最大の文化的な違いだと感じている。
日系企業では全てが指示待ちスタイルで、殆どの人が死んだ魚の目をしていた。
指示待ちのスタイルは、どれだけ技術力が高くても評価されにくい。逆に言えば、積極的に動ける人間は、技術力が平均的でも存在感を出せる環境ともいえる。
こうやって周りのために動ける人は、当然評価されるし、何より自然と人が付いてくるから、コンサルにおいてはこの積極性・利他的な精神が極めて重要。
技術を非技術者に翻訳する力

クライアントの意思決定者は、たいてい技術のことをよく知らない。知っている方が稀。
「その要件を実現するのにどうしてそんなに工数がかかるのか」、「なぜそのシステム構成なのか」、「なぜその要件が実現不可なのか」など、わかりやすく説明できるかどうかが問われる。
技術的な実現可能性を判断して、クライアントに正直に伝える、という場面は現場でもよく発生する。
「それは技術的には可能だが、コストとスケジュールを考えると現実的ではない」と言えるような「できる/できない」を正確に見極める力もわりと必須になってくる。
ただ、これはテクノロジー部門特有かもしれない。
あくまでも土台は技術力

このように、純粋な実装力が求められるというよりは、クライアントに寄り添える力、「周りのために」、「チームのために」動ける力がコンサルでは特に重要になる。
ただし、もちろん様々な場面で意思決定を行う上では、ある程度の「技術力」はマストになるので、一通りのSIの開発経験が土台となることは間違いない。
だから、純粋な技術力というより、その技術力をベースとした上流が求められるという話。
ただ、上流のスキルは正確にはすぐに求められるわけではなく、システムなどのカスタム開発を一通り経験した後にキャリアアップを目指す人向けの20代後半、または30代以降の人に当てはまると思っていただきたい。
新卒で入社した20代前半や後半の人は、コンサルであっても最初の数年は下流工程をしっかり学ぶ期間に費やすべきである。
クライアントとがっつり対話していくのは、基礎を作り上げたその後からでも十分である。
コンサルといえど人材の質はピンキリ

実際に入ってみてわかったのは、「技術力」という観点でほんとにそこまで飛び抜けている人はいない。
なぜかというと、一つのプロジェクトには様々なロールが存在していて、必ずしもテックスキルが必要ではないからだ。
規模にもよるが、トップマネジメント層、PMO、BA(ビジネスアナリスト)、業務、アーキ、共通機能、インフラ、障害対応チームなど。
例えば、PMOはプロジェクトの予算管理や契約関連などを担い、業務チームに関してはお客さんと対話しながらシステムの要件定義を行うので、テクノロジースキルは一切不要になる。(システムに詳しい人に丸投げすることもザラにある)
だから、言ってしまえばPMOや業務は誰でもできる仕事なのである。(もちろん、資料作成やクライアント調整などのテクノロジー以外のスキルは必要)
また、アーキやインフラチームなどのテック領域であっても、実際の下流工程は社内のオフショアや一次請けの会社にお願いすることもあり、上流しか経験のないエンジニアも多い。
もちろん化け物は存在する。技術に明るく、頭の回転も以上に速く、全ての領域を見れる人、クライアントの関係構築もすば抜けている人——狂ったほどのスペックを持つ人もいる。
ただ、実際にはそういった人は一部の人だけで、ほとんどの人がむしろ技術には疎い人が多いが現実だったりする。
技術力のある人は圧倒的需要がある

「コンサルでは純粋なテクノロジースキルはそこまで求められない」という話をしてきたが、これは「技術力は不要」という意味では全くない。むしろ逆で、技術力のある人間の需要は圧倒的に高い。
理由はシンプルで、「技術もわかって、上流もできる人間は希少だから」だ。
クライアントからのQAやシステム障害などで答えを求められても、技術力をベースとしてきていないBAやPMO、業務の人たちが自分たちだけで解決することはまず不可能。
これがアーキテクチャに詳しい人であれば、即答、あるいは短時間での調査で正解に辿り着くことができる。
つまり、技術力は「必須条件ではないが、あればどのロールでも頼れる人材として重宝される」ということ。
PMOやBA、業務は替えが効くけど、技術者は替えが効きづらいのである。
どのロールでも+αで技術力のある人間は、それだけでコンサルとしての市場価値は非常に高い。
それなのに、技術者というのはコンサルビジネスの構造的な問題で、需要も専門性もあるのにPMOやBAなどのロールと比べると単価が低いというクソみたいな現実がある。
だから、コンサルでは技術力を土台にしつつ、クライアントに近い位置で業務要件・システム要件定義・課題解決・提案などを行える上流のスキルが非常に重要になってくるという話。
まとめ:コアとなる技術を身につけ、上流を磨く
ここまで、技術力がすべての基礎になるという話をしてきた。
今は生成AIの普及によって、下流工程のハードルは劇的に下がってきたけど、これは嘆く必要は全くなく、むしろ効率的に技術を学ぶことができるようになったと前向きに捉えることが重要だ。
要件の実現性を見極める力、限られた予算の中で要件を実現するための提案力などはまだまだ人間の仕事であり、その力の土台となるのはやっぱり「技術力」になる。
生成AIで出力したコードを理解せずにそのままレビューに出して作った気になるのは論外だが、AIを使いこなしつつ、自分自身のコアとなるテックスキルを一緒に育てていくことが、特に若手エンジニアにとっては今後重要になってくると感がている。
このように、早いうちから「技術力」を身につけておくと、本来のコンサルとしての提案(いわゆる上流)も自然と任せられるようになるので、ITコンサルとしてのキャリアアップ・年収アップを目指す上では、ここまで話してきた「技術力(土台) + コンサル力 」を意識していくと、キャリア形成の解像度が一段と上がるはずだ。